sein
Project-01
見えないものたちの気配
What can I find in the darkness?
暗闇は、わたしたちの生きる世界に確かに存在している。それは、争いや不安といった影として。
そしてまた、建築や空間が持つ、静けさや深さとして。
不安も、恐れも、美しさも、全てが闇の中から浮かびあがり、目の前に姿を現す。
暗闇の中に潜むものたちの存在に、わたしたちは目を凝らし、耳を澄ませる。
そこで出会うのは、忘れられた記憶や、見過ごされた感情など、目には見えないものたちの気配。
透明と不透明、軽さと重さ、静寂とざわめき。相反するものが交差することでしか立ち現れない気配を、衣服として、身体の動きとともに浮かびあがらせていく。
暗闇のなかで、わたしは何を聞き、何に触れ、何を見出すのか。
この問いは、外の世界に向けられたものでもあり、同時に、自分自身の内側を照らすためのものでもある。
争いの苦しみが続く暗い世界でも、衣服を纏うことが、一筋の光や一点の鮮やかな色彩となって、誰かの心に届くことを願っている。
Darkness truly exists in the world we live in as shadows of conflict and anxiety, and as the stillness and depth of architecture and space.
Anxiety, fear, and beauty—all emerge from the darkness before us.
We strain our eyes and listen closely to the presence of what lies hidden within it.
What we encounter there are traces of things invisible to the eye — forgotten memories and emotions we have overlooked.
I create clothing that gives form to the presences that emerge at the intersection of opposites: transparency and opacity, lightness and weight, silence and noise — brought to life through the movement of the body.
In the darkness, what can I hear? What can I touch? What can I find? These questions are directed not only toward the outer world, but also toward the illumination of one’s own inner self.
Even in a world darkened by the pain of conflict, I wish for the act of wearing clothes to become a single ray of light, a vivid flicker of color, reaching gently toward your heart.
About the Project
- たしかにそこに在るもの
- 建築設計事務所D.A.(Diverse Architects)のパートナーである建築家・中川宏文が、自身のファッションブランド「Sein(ザイン)」を立ち上げ、初のコレクションを発表する。
ブランド名「Sein」はドイツ語で「存在」を意味し、そのコンセプトは「たしかにそこ在るもの」。
日常のなかで見過ごされてしまいそうな、脆く、不安定で、儚い「あらゆるものごとの在り方」を丁寧にすくい取り、かたちとして表現したいという思いが込められている。
衣服を纏うわたしたち自身の身体や感情、この世界に溢れている無数の「たしかにそこに在るもの」を紡ぎ直し、再構築する試みである。 
- 建築と衣服が生み出す雰囲気
- 中川は長崎県長崎市出身。建築家として近作の住宅作品が国内の建築誌に掲載されるなど、活動の幅を広げている。
所属する建築設計事務所D.A.(Diverse Architects)は、建築家個々人の個性を尊重し、建築設計にとどまらず幅広い表現活動を推奨している組織である。
建築学を専攻した大学院の修士論文では、建築空間に漂う雰囲気に関する論文を執筆し、音、光、匂い、温度、肌触りなど、視覚情報だけではなく、五感をもって空間を捉えることの重要性を再認識する。
昨年、文化服装学院Ⅱ部服装課に入学し、歴史や哲学などの理論的領域から、デザインプロセスや生産の実務に至るまで、建築と服飾のあいだにある構造的・思想的共通性を再認識した。そして、この2分野を横断した思考と制作のプロジェクトをスタートする。
- 1000年の織都・富士吉田とともに紡ぐマテリアル
- 中川が長年、まちづくりや建築設計の仕事を通して関わってきた山梨県富士吉田市は、1000年以上の歴史をもつ織物のまちとして知られる。近年ではさまざまなテキスタイルイベントが開催されており、そこで上質な織物を生産する機屋との出会いを得たことが、ブランド立ち上げの大きな契機となった。
今回のコレクションで使用される生地の約8割は富士吉田市の機屋によるものであり、その一部は、国内外の多くのブランドと協働するWatanabe Textileと共に、お互いの建築体験や風景との出会いを話し合いながら、本コレクションのために特別に制作された。
- 建築 ✕ 衣服 ✕ 音楽による空間体験プロジェクト
- 会場は神奈川工科大学・北本英里子研究室の協力のもと大学構内の「KAIT 広場」を活用する。
空間演出は、建築プロジェクトを通じてこれまでにも協働してきた株式会社フロウプラトウの佐藤文彦・小島一郎がディレクション、それを支えるエンジニアリングはOFF-FLATの細野隆仁・元木龍也が担当する。
また、ショー全体の構成はこれまでファッションショーの監督などを務めた経験のある安藤雅晃が協働する。
さらに、演奏には国内外のコンクールで多数の受賞経験があり、文化芸術活動における業績が評価され昨年度の京都府文化賞を受賞するなど活躍の場を広げている新進気鋭のヴァイオリニスト・石上真由子を迎え、建築・衣服・音楽が交錯する総合的な表現の場を構築する。
イベント概要
Project-01
見えないものたちの気配
What can I find in the darkness?
- 開催日:2025年12月28日(日)
- 場所:神奈川工科大学 KAIT広場>アクセス
- 住所:神奈川県厚木市下荻野1030
- 開演:17時半(開場:17時)
※隣接するKAIT工房にて展示・販売などの計画あり(16時より)
※イベント後はKAIT工房にてアフターパーティを予定
中川 宏文
Hirofumi Nakagawa
長崎県長崎市生まれ
- 2013年
- 熊本大学工学部建築学科卒業(田中智之研究室)
- 2014年
- marte-marte-architects(Austria)研修
- 2016年
- 東京理科大学工学研究科修士課程建築学修了(坂牛卓研究室)
- 2016年–2019年
- 富士吉田市地域おこし協力隊(総務省事業)
- 2016年
- 坂牛卓一級建築士事務所+O.F.D.A.(スタッフ)
- 2021年–
- O.F.D.A.(現D.A.)パートナー兼取締役
- 2024年–
- 文化服装学院Ⅱ部服装科 在学中
Project Team
佐藤 文彦
Ayahiko Sato
東京工科大学客員准教授/株式会社フロウプラトウ(旧 ライゾマティクス デザイン) ディレクター
慶應義塾大学環境情報学部卒業。777interactive (現 777 Creative Strategies) にてメディアを横断した統合型コミュニケーションデザインを手がけ、株式会社ライゾマティクス(当時)に入社。共感覚や感覚複合体験を研究するシナスタジアラボでも活動。手法に捉われず体験やイベントの企画・ディレクションを行う。
小島 一郎
Ichiro Kojima
株式会社フロウプラトウ アートディレクター、デザイナー
IAMAS 情報科学芸術大学院大学修士課程を修了。在学中、リンツ美術工芸大学へ交換留学。2003年、ライブドア(入社時オン・ザ・エッジ)でデザイナーのキャリアをスタートし、2010年にライゾマティクス(当時)に入社。
環境や空間のコンテクストを汲み取り、オンスクリーンからプリントまで、メディアを問わずアートディレクション、デザインを行っている。https://ichiro.yokohama/
細野 隆仁
Takahito Hosono
株式会社OFF-FLAT 代表取締役 / 株式会社ロウエ 外部執行役員 / hylē ブランドディレクター
建築とアートをバックグラウンドにもつデザインオフィス、株式会社OFF-FLAT代表取締役。
建築・内装設計や空間・プロダクト・グラフィックのデザイン、またデジタルコンテンツの制作においてはアートディレクションからCG制作まで広く行う。プロダクトブランド「hylē(ヒュレー)」ではブランドディレクションと共にプロダクトデザインまで担う。
元木 龍也
Tatsuya Motoki
株式会社OFF-FLAT 取締役
エンジニアとして、広告演出や商業施設の開発に携わる。プログラミングからハードウェア・デバイス開発、設計、クラフト、3Dモデリングまで、領域を横断した制作を行い、映像だけでは伝えきれない空間や体験を形にする。
安藤 雅晃
Masaaki Ando
A OFFICE 代表
1994年生まれ。ファッション・アートなどのイベント演出、ディレクション、制作を行う。2023年、現代アートチーム 目[mé]がディレクションを手がけたさいたま国際芸術祭2023にて行われたファッションショー"We see us"にてショーディレクションを担当。
2025年、東京都現代美術館にて行われたSoundwalk Collective & Patti Smith:CORRESPONDENCESにて展示制作を担当。
炭屋 有里
Yuri Sumiya
ヘアメイク
ドイツにてオペラハウス専属ヘアメイクとして活動。カツラ制作をはじめ、時代物のヘアスタイル、舞台メイク、特殊メイクや特殊造形など幅広い技術を習得し、ドイツ国家資格を取得。帰国後はフリーランスとして、数多くのオペラ、バレエ、ミュージカル、演劇作品に携わる。
渡邊 竜康
Tatsuyasu Watanabe
テキスタイルデザイナー/建築家/写真家
山梨県富士吉田市に工場を構える渡邊織物3代目。テキスタイルブランドWatanabe Textile主宰。建築、写真、アートを創作の背景にもち、自然由来の素材を軸に、現代的なデザインかつテクスチャーを追求した上質なオリジナルの生地やプロダクトを創作。デザインから織りまで自身で手がけている。また、ファッションをはじめとする多くのブランドに生地を提供するテキスタイルメゾンでもある。自身の体験や、富士北麓の豊かな自然から無意識的に感じとった感覚をもとに創作を続けている。
https://tatsuyasuwatanabe.com/
藤枝 大裕
Hiroyasu Fujieda
服飾専門学校を卒業後、撚糸メーカーに入社。企画、営業職を経て、2011年、手紙社に参加。さまざまなイベント・店舗の立ち上げと運営に関わる。「布博」企画立案者。2016年4月より独立。2021年4月株式会社装いの庭設立。山梨を拠点に繊維・アパレル産業の新規事業開発や市場創出の支援を行う。
北本 英里子
Eriko Kitamoto
神奈川工科大学 情報学部 情報メディア学科 准教授 博士(工学)
建築情報学を基盤に、建築都市・デザイン・アートを横断する研究と実践を行う。フィジカルとデジタルの融合による“フィジタル”な創造をテーマに、xR空間・メディア・インタラクションの可能性を探究している。テクノロジーを活用した表現や体験の拡張を目指し、教育・制作・研究を通して新しい創造のあり方を模索しながら、人間と技術の共創による“躍る建築”に取り組んでいる。
©Masatoshi Yamashiro
石上 真由子
Mayuko Ishigami
日本音楽コンクール等、国内外で受賞多数。題名のない音楽会、NHKクラシック音楽館等メディア出演多数。東響、東京都響、読響、日本フィル、ブラショフ国立響など内外で多数のオーケストラと共演。長岡京室内、アンサンブル九条山メンバー。ポラリス国際音楽祭アドバイザー。Ensemble Amoibe主宰。Music Dialogue、CHANEL 室内楽、おんかつアーティスト。京都市芸術新人賞、音楽クリティック・クラブ賞、大阪文化祭賞、青山音楽賞、藤堂音楽賞受賞。日本コロムビア、ALTUS、キングレコード、ワオンレコードよりCD好評発売中。
令和6年度京都府文化賞受賞。令和7年度 京都府あけぼの賞受賞。
www.mayukoishigami.com
Brand Identity
Sein[zain]のブランドコンセプトは「たしかにそこ在るもの」です。
それは、目の前に実際に見えているものだけを指すのではありません。わたしたちの生きている世界の中には、慌ただしい日常の中で意識しないと掌から溢れ落ちてしまう、たくさんのものごとが存在しています。
原子や分子のようなミクロな存在から、地球規模の自然現象、気象現象、季節の移ろい、空模様の変化、人間の感情や愛しい人の笑顔など、それらは人の眼では見えていないものかもしれないですし、見えているけれども気づかないほどありふれた存在なのかもしません。それでも、その存在には人の心を動かし、大きな力を生み出す可能性が秘められているはずです。
この世界には、容易に理解できない現象があふれています。
全てに正面から向き合うことは難しいかもしれませんが、見て見ぬふりをせず、想像力を持ち、感性を研ぎ澄ませ、答えの出ない問いに対しても考え続ける
—それこそが、わたしたちに与えられた知性だと信じています。
Seinは、そのような、日常では見過ごしてしまいそうな、脆く、不安定で、儚い「あらゆるものごとの在り方」をしっかりと捉え、衣服という目に見えるかたちとして表現することによって、誰かの心を動かすことを大切にしたいと思います。
衣服をまとうこと。
それは、外の世界に存在する不確定で不安定な社会や経済、政治、戦争といった大きな力に対し、「わたしはここに在る」という身体的な表現であり、存在の証明でもあります。
衣服を纏うわたし自身の身体やその感情、この世界に溢れている無数の「たしかにそこに在るもの」たちを、デザイナーの五感をもって丁寧に掬い上げ、紡ぎ直し、衣服として表現し続けていきます。
The concept of Sein [zain] is “That Which Is Truly There.”
It does not refer only to what is visible before our eyes.
The world is filled with countless things that slip through our fingers unless we pause to notice them amid the haste of everyday life.
Microscopic entities such as atoms and molecules, global natural phenomena, shifts in the weather and seasons, the ever-changing sky, the emotions we hold, and the smile of someone dear—these may be things that escape the human eye, or things we see yet overlook because they are so familiar.
Even so, each of these presences carries within it the potential to stir the human heart and to give rise to a tremendous force.
This world is filled with phenomena that we cannot easily understand.
It may be difficult to face each of them head-on, yet I believe that our intelligence lies in refusing to look away—imagining, sharpening our sensibilities, and continuing to think even about questions that have no clear answers.
Sein seeks to hold firmly onto those fragile, unstable, and fleeting ways in which things exist—ways so easily overlooked in everyday life—and to give them visible form through clothing, cherishing the hope that they might move your heart.
Wearing clothing is a bodily expression—a way of saying “I am truly here.”—and a declaration of existence in the face of the vast, unpredictable, and unstable forces of the world outside ourselves.
I will continue to gently gather, through my own five senses, my body that wears these clothes, the emotions that arise within it, and the countless “things that are truly there” that overflow in this world—reweaving them and expressing them anew through clothing.